日本の住宅は新築から30年程度で壊されています。
では、欧米の住宅は壊されるまでにどれくらいだと思いますか? 日本の倍にあたる60、70年は当たり前、イギリスでは80年を超えます。
この差は、住宅そのものとメンテナンスに対する考え方の違いからきています。
日本の住宅寿命は、先進国で一番短いといわれています。いわゆるスクラップ&ビルドが行われているのには、いくつかの理由があります。
1.高度経済成長期以降「質より量」を重視した家づくりが続いた
2.建物より土地に価値が置かれ売買が行われてきた
3.「質より量」が重視された建物が多いため、中古住宅を売買する市場が育っていない
4.木造住宅の耐用年数(資産の価値)が22年程度とされてきたことが、木造住宅の「限界」と認識されるようになった
5.1981年と2000年の建築基準法の改正で木造住宅に求められる耐震基準がアップした
上記のような事柄が、中古住宅をメンテナンスして使い続けるよりも、新築を好む流れをつくり、日本の住宅寿命を短くしていったと考えられ
ます。しかし昨今では、少子高齢化が進んでいることや、自然環境保護の高まりから家に対する考え方は変わりつつあり、今ある家を大切にしていこうという流れができてきました。そこで参考にしたいのが、家をていねいにメンテナンスしながら長く住み続ける海外の取り組みです。
実際に欧米では、きちんとメンテナンス・リフォームされた家は、新築の住宅よりも資産価値が高いとされていて、住宅の購入時には新築よりも中古住宅を選ぶ人が多くいます。
では、海外でどれくらいリフォームされているかというと、国土交通省住宅局の資料(2011年)によれば、住宅投資に占めるリフォームの割合は日本が27.9%なのに対して、イギリス57.3%、フランス56.4%、ドイツは76.8%。費用にすると日本の倍以上が使われています。
ライフサイクルやライフスタイルが変わったら変化に合った家に住み替えるという文化があり、住み替え時には家を高く売りたいと考えることもメンテンナンス・リフォームの意識を高めているようです。
特にイギリスにおいては、住人には次世代に家を引き継ぐことを前提に住む間にメンテナンス・リフォームをすることが義務付けられているそうで、築200~300年の住宅は珍しくないそうです。
海外の家は耐火性や耐震性が高かったり、水回りなど傷みやすい箇所は取り替えがしやすいように設計されていたりと、メンテナンス・
リフォームが考えられた設計になっていることが多いようです。ただ、とにかく長持ちさせることを優先して作られているわけではありません。
例えば窓枠。
日本では傷みにくいアルミサッシが主流ですが、海外では木製サッシがまだまだ使われています。腐食する可能性があるものの、見た目や風合いが好まれているようで、定期的に塗装をして使い続ける人は多いそうです。
外壁には漆喰壁や土塗り壁などの「塗り壁」がよく選ばれています。
タイルや壁材にはない左官職人の手仕事ならではの出来上がりを求める人が多いのでしょう。
そして、汚れやコケは定期的に落とし、汚れやヒビが気になったら家族総出で好みの色で塗装し直したりして家の成長を楽しみ、そして次世代へと引き継いでいくのです。
日本の家も十分な耐久性を備えています。
新築から10年、20年と必要なメンテナンスをして、30年、40年と思い出を積み重ねていきたいですね!